米国のゼロ金利政策と量的緩和策
米国は、瀕死の状態に陥った金融機関に収益機会を与えつつ、その一方で、傷んだ実体経済を立て直すための方策として、超金融緩和策を導入しました。
具体的には、アメリカの中央銀行に該当するFRB(連邦準備理事会)は、2008年12月16日のFOMC(連邦公開市場委員会)において、政策金利であるFFレート(フェデラル・ファンド・レート)の誘導目標を0〜0.25%とする、初めてのゼロ金利政策に踏み切りました。
また、同日に、金融政策の手段として、通貨の流通量を増やす「量的緩和策」を採用する可能性があることも明らかしました。
量的緩和策の実行について
前述の「量的緩和策」は、2009年3月18日のFOMCで承認され、次のようなことが決まりました。
■6か月間で3000億ドル(約30兆円)の長期国債の買い付けを行うこと
■住宅ローン担保証券の購入額を5000億ドル(約50兆円)から1兆2500億ドル(約125兆円)に増やすこと
■フレディ・マック(連邦住宅貸付抵当公社)が発行する住宅債券※の買い取り枠を1000億ドル(約10兆円)から2000億ドル(約20兆円)に増やすこと
なお、これらの量的緩和策は直ちに実行に移され、ニューヨーク連邦準備銀行は、2009年3月25日から市場を通じて国債の買い付けを始めています。
※政府系金融機関が発行するエージェンシー債のことです。
米国の通貨安政策とは?
前述した「量的緩和策」が実行される前の2008年秋以降、FRBは危機に陥ったシティバンクなどの大手金融機関の資金繰りを支えるために、緊急避難的な措置として金融機関が保有する証券などを担保にした貸し付けや買い取りを行ってきました。
この結果、市場に大量のドルが出回る一方で、FRBのバランスシート(貸借対照表)には金融機関から買い取った大量のリスクの高い資産が残ってしまうという異常事態が起こってしまいました。
そして、中央銀行が大量のリスク資産を保有していれば、その国の信用は低下していきますが、その後も緊急避難的な措置は常態化したことから、FRBが抱えたリスク資産は増える一方だったのです。
こうした政策は通貨の堕落を意味しますので、為替市場の視点で見れば「通貨安政策」ということになるのです。
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