アメリカの貿易収支が改善した?
2010年上半期は、アメリカを筆頭に、世界経済は政府のサポートによりなんとか落ち込みを免れ、プラスを維持していますが、それとは反対に、政府の負担は膨れ上がっており、財政赤字の拡大、借金である国債の発行は急増しています。
以前のアメリカは、世界で生産する製品を一手に購入し消費していましたので、輸出よりも輸入が圧倒的に多く、輸出総額から輸入総額を差し引くと輸入超過となり、貿易収支の赤字(貿易赤字)が拡大していました。
実際問題として、このままいくと、アメリカの財政が持ちこたえられなくなり、ドルが暴落するとまで危惧されたくらいです。
事実、金融危機が始まる2008年9月までは、アメリカの貿易赤字は毎月600億ドルもあったわけで、これは当時の為替レート(1ドル=約105円)で換算しますと、毎月6兆円以上にも上っていたことになります。
それが、金融危機後の2009年1月と2月は赤字額が300億ドルを割り込み200億ドル台になりました。これは当時の為替レート(1ドル=約90円)で換算しますと、2兆7000億円くらいになります。つまり、わずか半年ほどで貿易赤字が半分に減ったということです。
ただし、この貿易赤字の半減は、アメリカ経済の輸出が好調だったからというものではなく、アメリカのおカネの回りが悪くなりモノが買えなくなった(輸入できなくなった)うえに、おカネを稼ぐための輸出もできなくなったということですので、喜べる数字ではないのです。
「需給ギャップ」が生じている状態とは?
アメリカ政府やFRBは、景気対策や金融安定化策、ゼロ金利政策を実施しているものの、瀕死の経済を回復基調に乗せるのは容易ではありません。
つまり、長期的にどうかというのとは別に、この半年や1年で目に見えて回復するのは相当困難と言わざるを得ない状況ということです。
アメリカの製造業というのは生産設備が過剰となっていますが、そのうえ、高い生産能力を持っているのにもかかわらず製品を買う相手がいないので、生産設備の稼働率も低く、遊休設備は増加しています。
失業率が10%というのは極めて異常な水準であるといえますが、生産設備が動かないのであれば労働者も必要ありませんから、失業者は増える一方です。
それが消費を冷やし、モノの値段を押し下げる、それでもモノが売れずに余るので、さらに生産設備の稼働率が低くなり従業員は解雇される、というような悪循環が続くと、GM(ゼネラル・モーターズ)のように世界一の自動車メーカーであっても破綻してしまうのです。
「需給ギャップ」が生じているというのは、こうした状態のことをいうのですが、この需給ギャップを解消することが課題といえます。
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