現在の金市場はプロの投資家の買い
2009年の金市場では、スクラップとかリサイクルと呼ばれる宝飾品など、金製品の換金売りの増加が注目されました。
というのは、日米欧など主要国では、宝飾品を投資対象として考える人は多くないのですが、その主要国で買取ビジネスが隆盛を極め、換金売りが急増していたからです。
使用しなくなった宝飾品を不満のない価格で換金できることに魅了された人たちの多くは、おそらく現在の金価格がいくらなのかということについては知らないと思われますが、その人たちによる売り物が集められて精錬され、金地金として市場に出回り、それをヘッジファンドが買っているという構図が出来上がっていたのです。
つまり、現在の金市場は、一般庶民の換金売りに対してプロの投資家の買いという構図になっているのです。
この投資家に運用を委託しているのは富裕層と呼ばれる人たちですが、今は、中央銀行などの機関投資家は別として、一般庶民から富裕層へという世界的な金(ゴールド)の流れが起きているようです。
アメリカは景気の底割れを回避できたが…
アメリカでは、政府による巨額の財政出動による景気のテコ入れが功を奏したおかげで、なんとか景気は底割れを回避することができました。
これは、FRBによる金融機関への潤沢な資金供給によって、カネの巡りが改善してきたということにほかなりません。
しかしながら、実際には、供給された資金というのは、リスクの少ない国債の購入に投じられ、しかも証券や商品市場への投資ノウハウを持つ大手の銀行はディーリングで利益を上げることに躍起となっているという状況でした。
つまり、資金は景気に効く融資ではなく、投資に回っていたということです。
なぜ富裕層は金(ゴールド)を取得し始めているの?
とはいえ、そのような状況でもなんとかプラス成長を保っていたのは、政府の補助金政策があったからですが、景気の悪化によって税収の減った政府にはそれほど余裕もありませんので、新たな国債の発行(借金)を続けているのが現状です。
つまり、民間部門で手に負えない負債やリスクを政府や中央銀行が肩代わりする「移し替え」で持っているのです。
2月に発生したギリシャなど南欧の財政赤字への不安は、主要国共通の問題ですが、膨張した国家財政の赤字の後にインフレがやってくるということは過去の歴史が示しています。
政府債務の問題は、国家の信用が問われているわけで、それ故、その国家と一定の距離を置く金(ゴールド)が見直されているのです。
富裕層だけでなく、新興国の中央銀行が金(ゴールド)の買い増しに動いているのも同様の理由からと考えられます。
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